金井先生の障害年金教室の5回目です。お客様で障害年金の対象になるのかどうなのかお困りの方がいらっしゃったらお気軽におっしゃってくださいね。
今回は、前の病気と後の病気が関係ありそうな場合は初診日をどうするか?についてです。
こんにちは。社会保険労務士の金井雄吾です。
今回も前回に引き続き、「初診日」について掘り下げてみたいと思います。
初診日の概要については、第3回のメールマガジンでお伝えしましたので全体を知りたい方は、そちらをごらんいただくと分かりやすいと思います。
- 関係のある病気と、関係ない病気について
前の病気・ケガがなければ、次の病気・ケガがなかったであろうと判断される場合には、前後の傷病を一つと考え、前の病気・ケガにより始めて医師等の診察を受けた日が初診日となります。
このように二つの傷病に関係があることを「相当因果関係がある」と言います。
それでは、判断基準を見てみましょう。
- 糖尿病と糖尿病性網膜症または糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性動脈閉塞症等は、相当因果関係ありとして取り扱う。
- 糸球体腎炎(ネフローゼ含む)、多発性のう胞腎、腎盂腎炎に罹患し、その後慢性腎不全を生じたものは、両者の期間が長いものであっても、相当因果関係ありとして取り扱う。肝炎と肝硬変は、相当因果関係ありとして取り扱う。
- 肝炎と肝硬変
- 結核の化学療法による副作用として聴力障害を生じた場合は、相当因果関係ありとして取り扱う。
- 手術等による輸血により肝炎を併発した場合は、相当因果関係ありとして取り扱う。
- ステロイドの投薬による副作用で大腿骨頭壊死が生じた場合は、相当因果関係ありとして取り扱う。
- 事故または脳血管疾患による精神障害がある場合は、相当因果関係ありとして取り扱う。
- 肺疾患に罹患し手術を行い、その後、呼吸不全を生じたものは、肺手術と呼吸不全発生までの期間が長いものであっても、相当因果関係ありとして取り扱う。
- 転移性悪性新生物は、原発とされるものと組織上一致するか否か、転移であることを確認できたものは、相当因果関係ありとして取り扱う。
具体的な事例
ミツオさんは、平成5年7月15日に体のだるさを感じ、あおぞら内科クリニックを受診しました。
検査の結果、糖尿病と診断されましたが食事のコントロールと投薬を受けただけで、普段どおりの仕事や日常生活を送っていました。
その後、平成27年8月1日の健康診断で腎臓の異常を指摘され平成27年9月20日、北山総合病院で診察を受けたところ糖尿病性腎症と診断されました。
平成28年2月1日から人工透析を受けることになりました。
このような場合、初診日は北山総合病院を受診した平成27年9月20日ではなく、あおぞら内科クリニックを受診した平成5年7月15日がミツオさんの初診日になります。
これとは反対に、一般的には関係があるとされる病気について、手続き上は「相当因果関係がない」とするものがあります。
- 高血圧と脳内出血または脳梗塞は、相当因果関係なしとして取り扱う。
- 糖尿病と脳内出血または脳梗塞は、相当因果関係なしとして取り扱う。
- 近視と黄斑部変性、網膜剥離又は視神経萎縮は、相当因果関係なしとして取り扱う。
今回は、二つの病気に関連がある場合の初診日についてお伝えしました。
一言で「初診日」と言っても、なかなか特定が難しいということが分かっていただけると思います。
さらに次回は、初診日についての障害年金独特の考え方、「社会的治癒」についてお伝えいたします。